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疲れを微塵も感じさせないどころか、やはりワクワク感を孕んだような返事が戻ってきた。
「じゃあ、だったら……」
ここへきて、緊張がもの凄い速さでわきあがり、こわばる四肢を感じた。
しかし休んだところで、わっかに首を通せば同じことは起こるに決まっている。それにだ、これは自分が熱望したこと―――。
「お願いします!」
だから真っ直ぐな視線でいった。
「はい。じゃあ、いきましょう!」
そう一段声に力を込めた彼女は、片手のスマホを高くあげ、そしてもう一方の手をシャッターに添えた。
「それでは、よ~い……」
両腕は体側に添わし、そのままの目でゴーサインを待った。
「……ハイッ!」
両足を浮かせた。
直後、
“カシャカシャカシャカシャ”
鋭利な連写音。―――が、
“ウゲーッ”
靴裏は、すぐさま座面を求めてしまった。
手は勝手に首からロープを外し、喉からは咳がほとばしる。その激しさが躰のバランスを危うくさせ、わたしはパイプ椅子から飛びおりていた。
「大丈夫ですか!?」
あわてた声が飛んできた。
ちっとも大丈夫じゃない!
折った躰で咳き込みながら思っていると、アラームが聞こえた。
―――九秒って、ずいぶんある……。
ちょっと吊っただけでも目の玉が飛び出んばかりになり、頭蓋に即刻集中した全血流の渦によって、破壊されるのではないかと思われるほどの危機的激痛を脳髄に感じた。
こんな状態を、九秒間も……。
怖気のさらなる増長は、とても抑制し難かった。
しばらくして呼吸が落ち着くと、まるめた背をさすってくれていた彼女はわたしの顔を覗き込み、いたわるような声をよこした。
「一応、撮れましたけど……ご覧になりますか」
ほんの一瞬の出来事で、どれほどのものが撮れているのか心もとなかったが、上体を起こしそっと息を吐くと頷いた。もしこれで納得のいく画が映っていれば、この驚愕の苦痛をこれ以上味わわなくて済む。
しかし案の定、覗き込んだ液晶モニターに映しだされた一〇枚もない画像すべてには、たしかに目をつむった苦痛の表情があったものの、みな特段そそられる風情ではなく、単なるしかめた顔、というふうにも見えた。
「二秒もなかったので、これしか写せなかったんですけど」
横から手を伸ばし、モニターの操作をしていた彼女は、申し訳なさそうにいった。
カメラから顔を離すと、
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