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どうしよう……。の思いがわいた。
当然求めるものにはほど遠い。しかし、再度のトライは……。
頭の中で恐怖と欲望の天秤が揺れる。
ため息が、再び咳をもよおさせた。
「どうしましょう?……やっぱり、やめますか?」
心配げな言葉は“恐怖”に比重を持たせたが、でもそれが、負けず嫌いの性格からか反発心をも発生させ―――。
このチャンスを逃したら……。
そして九秒までは死なない……。
それに、高額ではないとはいえ、ギャラを払ってしまった……。
だいたいだ、今のはあまりにも無防備に臨んでしまったからでの結果ではないか? 自分は本当に死のうとしているわけではない。だからある程度、全身力んでいいはず。そうすれば多少苦しさは和らぐのではないか? それでも首を吊ることに変わりはしないのだから、苦悶の表情は撮れるのではないか?―――いや、撮れるはず!
「もう一度やらせて」
半ば強引にその身に信じさせたわたしは、出にくい声を張った。
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