(四)

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 花奈の小さな顔は、わたしの熱が伝播したかのように真っ赤に染めあげられ、ファインダーを通さず向けられた瞠られた目も、まばたきを忘れている。そしてその下、ほのかな膨らみの胸は大きな上下運動を見せ、制服のスカートから覗くギュッと内股に閉じられた両足は、プルプルと震えており―――。  その彼女の全体像が、瞬時に理解させた。  ―――興奮している。  ―――わたしを見て感じている。  ―――そしてそれを必死に隠そうとしている。  同時に、彼女が首吊りマニアたちの写真を撮り続けた意味にも、いきついたような気がした。  常識的に考えて、そんな忌事を真似した写真、いくら金が絡もうが撮りたいとは思わないだろう。だが、彼女は一件も断らなかったといった。そこには、はじめて撮った友人の写真に、否、その姿に、絶大なる性的興奮を抱いてしまったからではなかったか。その証拠が、今の彼女の表情であり、揺れる内股だ。  ―――と、そんな思惑が、新たな想像を呼んだ。  もしやお嬢さま教師のあの凶行は、実は服を着たままでの、自慰だった……。  ゆえにあの姿態は、苦悶ではなく快感を表していたのではなかろうか……。  あれは淫楽を満喫しているがための、よだれやうめき、痙攣であり、全身の弛緩、そして失禁は、昇華した情欲の証だったのではないだろうか……。  性感を得る場所は、なにも局部だけではない。―――それを知った今、その突飛な推量は、しかし確信に極めて近かった。  そしてその自慰を生徒たちに披露することで、自らに恥辱を与え、懺悔に変えたのではないか……。  わたしの淫心の激しい疼きは、そんな他人の、しかもお嬢さまのはばかることのない恥ずべき行為を、堂々と目にしたことによるものだった。  実際あのころ、わたしの躰はすでに女のものとなっており、自らを慰めることも経験していた。しかし、あれほどの快感を得たことは、それまでになかった。  だから花奈にとっての今の自分は、あのときの教師そのものであり、五指のかわりに硬く無骨なロープを使い、彼女の面前にさらした陰部を、淫らに、そして激しくまさぐっている……ということなのだろう。  そうか!  わたしの依頼を受けた際に見せた彼女の目の艶っぽい輝きは、報酬が手にできるからではなく、被写体の悶え狂う姿態が見られるという期待からだったのか。
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