(四)

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 途切れないシャッター音は、いつしか視姦されている錯覚を引き寄せ、劣情を大いにあおっていた。  見てぇ……。  ……見てぇ……。  …………見てぇ……。  音にならない悶え声を荒い息の間にあげていたわたしは、興奮を押さえ込みながら黙々とシャッターを切り続ける彼女に、けなげさを感じていて―――。  そしてそんな姿にたまらないいとおしさを抱きもした心情は、動かない手を、真っ赤に上気した彼女の頬へ必死に差し向けようとした。  触れて快楽を一緒に味わいたい。女にしか与えられない感動をともにしたい。精神的な合体を得たい。  アアッ!  登頂しそうになる躰を、  もうちょっと!  快感のさらなる深みを求めるため、力んでとどめた。―――そのとき、  なんの前触れもなく、突如視界が波打ち始めた。それにともなって、当然花奈の姿も、その前に立つカメラも、盛大に歪み―――。  なにっ!?  たちまち眼前が理解不能な混沌とした景色になったのは、絶頂を抑圧した末の脳内の狂い、もしくは反乱が引き起こした結果か―――。  が、それも寸時のことであって、  えっ!?  再び規律をとり戻した映像には花奈、ではなく、自分自身の姿が―――。  どうして……?  さっき確認した写真が網膜に残っているの……?  いや、そうじゃない。今見ているのは静止画ではなく、動画。必死にもがいている自分……。  これは幻視……? 幻覚……?  いや、それも違う!  わたしの両眼はしっかりと捉えている。苦しみもだえるわたしを映す、姿見を。それはごく見慣れた縦長の―――。  では、シャッター音も消え失せているここは……。  カメラの存在など跡形もなくなっている空間全体に目を走らせる。  途端、今まで感じていなかった閉塞感。加えて、デスクトップPCの置かれる隅のライティングデスク、並びに、その背面に認めた暖色の壁紙が、ギャラリー内ではないことを如実に訴えていて―――。  両腕に触れる柔らかな感触に気づいた。  いつも使っている柔軟剤のいい香りがするそれは……衣類。  ではわたしがいるのは、クローゼットの中……。  間違いない。ここは、自室。自分の部屋。  どういうこと……。   だがその疑問は、囚われた“見なければ”という強迫観念によって、即粉砕される。
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