(四)

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 そういえば、いついってもなかった彼女の傘。すべて雨降りの日だったのに。それはどうして……。  傘立があるのに、濡れたそんなものをほかのところにしまうだろうか……。  と、次いで映ったのは“トイレのドア”。  そう……まったく気づくことのなかったそれの出現は、なぜか下着を替えたいという欲望の抱きを見計らってのような……。  それらこそが非現実世界であることの、伏線だったのか……。  だがそんな疑問にかかずらっている(いとま)など、極限の苦しみがそう与えるはずもなく―――。  だめだ……たすけて……。  映像を吹き飛ばした頭内を、か細い声が横切った。―――その拍子に、                     (……ノゾミ……)  感覚は損失されているはずと思われた総身に萎えを覚え、股間からは無節操な噴出を感じた。  フェードアウトされた視野は、わたしの残像さえも残しはしなかった。
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