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そういえば、いついってもなかった彼女の傘。すべて雨降りの日だったのに。それはどうして……。
傘立があるのに、濡れたそんなものをほかのところにしまうだろうか……。
と、次いで映ったのは“トイレのドア”。
そう……まったく気づくことのなかったそれの出現は、なぜか下着を替えたいという欲望の抱きを見計らってのような……。
それらこそが非現実世界であることの、伏線だったのか……。
だがそんな疑問にかかずらっている暇など、極限の苦しみがそう与えるはずもなく―――。
だめだ……たすけて……。
映像を吹き飛ばした頭内を、か細い声が横切った。―――その拍子に、
(……ノゾミ……)
感覚は損失されているはずと思われた総身に萎えを覚え、股間からは無節操な噴出を感じた。
フェードアウトされた視野は、わたしの残像さえも残しはしなかった。
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