(四)

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「あら、ちょうど出たあとだったんですか?」  足元からのぼってきたその言葉は、はぎとられたであろうおむつを見ての―――。  夢の中の失禁は、そのまま現実世界に放出されたらしい。 「だけど、出したのお小水だけじゃないみたいですね。なにかいい夢でも見たんですか?」  普通の患者にはするはずもないその問いかけをともなって、眼前にあがってきた彼女の笑み―――それが気づかせた。  わたしより少し年下な看護師の、その小柄な体格と顔、そしてショートにしたボブヘアーが、花奈を、おそらくイメージさせたのでは……。  その推測が、たちまち彼女との再会を熱望させた。  同じ夢に訪問できる見込みなど、どれほどあるものだろうか……。  しかしどの道、今、そしてこれからの生涯、自分にできることといえば、非現実を彷徨うことぐらいしかない。  わたしは自由にできないまぶたを意識上で閉じる。この上もない興奮と快楽を、再び幻想の、あの五月雨の日々に求め。  おむつは、すぐまた濡れてしまうかもしれないな……。  それが夢幻世界へ突入する間際に浮かんだ思いだった。
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