(一)

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《葉書きた~? 出るでしょ~?》  淡白なメッセージ。  用件の意味はすぐに察せられた。  前日、葦谷望(あしたにのぞみ)様という印刷文字の葉書が自宅である実家に届いていた。往復葉書などなんだろうと思って開いたところ、それは小学校時代の同窓会案内。成人を記念して行おうという。  小学生時代から未だつき合いの続いている友人は、サッチンぐらいだった。それは、高校までずっと同じところに通い、同じ部活ですごした、という経緯が大きいと思う。大学も同じ所へ、と、お互い思っていたのだが、それだけは残念ながら叶わなかった。  それはともかく―――、  スマホから顔をあげ、短い回想をきった。  見たあの夢は、この葉書が原因だったのではないか……。しかも、梅雨時ということも手伝い……。  出欠の返信期日はまだずいぶん先であり、こちらからもサッチンに連絡しよう、と思いながら就いた床での、夢。奇しくもあのときの事実をきっちりとトレースしていた、夢。  悪夢には違いなかった。しかし、無性に興奮を促す映像であり……。  実際目覚めた躰は汗だくで、股間部は、それではない液体で濡れもしていて……。  あの事件が、小説、しかもホラー物を書くにいたった原因……なのだと思う。―――あんな衝撃を、興奮を、自らの手で生みだしてみたい、との願望が働き……。  だが、投稿したどの作品もが、未だ最終選考以上に届いていないことを考えると、その望みは叶えられていないといっていい。  今までに幾度か送られてきた書評には、決まって、“リアリティーの欠如”が指摘されており……。それは自身でも感じてはいて……。  だからこそあの光景を、あの表情を、もう一度見たい。あの血の騒ぎをもう一度味わいたい。そうすればきっと……。  だが、そんなこと、できるはずもなく……。  さすがにもう、才能のないことを認めるか……。  そう自身に問いかけたとき、 「お待たせいたしました」  柔らかな声で我に返った。 「失礼いたします」  と、テーブルに注文の品を置いたウェイトレスは、ふいに、「あっ」声を洩らした。  え? という顔を彼女に向けると、その目はわたしのスマホに落ちていて―――。  しかしすかさず、 「いえ、失礼しました」  彼女はトレーを胸に抱きながら、片方の手で口元を押さえた。 「なにか……?」
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