(二)

3/3
前へ
/91ページ
次へ
 ―――が、私はいつまでたってもあれを好きになれない。  掃除などでお嬢さまの部屋に入ると、見なければいいのに、つい目をやってしまう。  あれはなぜかいつも、なにかを企んでいる―――そんな目をしているように思えて……。  今夜に限っていえば―――さっき垣間見た横顔は、まるで出窓に向かってなにかを一心に想っているようにも感じて……。  アンティークドール。  相当の年代物らしいのだが、それにしてはいつまでも古色を感じさせないところが、薄気味悪さを助長する。  その怖気が、怖いもの見たさという意識を働かせてしまうのか……。 “カチャン”  落としたナイフの皿にあたる音が、意識を引き戻した。 「いけない……」  小さく声に出し、一度頭をふると、キッチンへとって返した。
/91ページ

最初のコメントを投稿しよう!

15人が本棚に入れています
本棚に追加