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彼女の躰が弓なりに反るのは、それからすぐであり、その後、腕を口から解放されたワタシが、抱き締められた胸の上で痙攣を感じるのも、決まったいつものストーリーだった。
荒い息が整い、再びワタシの顔に優しい口づけをよこす彼女の顔は、闇に慣れきった目には鮮やかに浮かびあがり、そこには紛れもなく、素晴らしい快感を得た後に見せる艶かしい笑みが、例外なくあった。
そんな表情を、もしくは、恥じらうも、その内に喜色を滲ませる面を、未だ彼女は男性にそそいだことはないであろう。あったとすれば、いの一番にワタシに報告してくれているはずだ。そして、その経験がないのは、ワタシも同じだった。
再び彼女が息を荒くするのは、まず毎回のことで―――。
ただ今度は、胸にあてがわれたワタシはすぐ、下腹部へと誘われる。動かない視界に入ったそこでのワタシの手は、添わされた彼女のそれの指示によって、快楽を引き寄せるための作業を担う。
当然感触などない。しかし、間近で聞こえる淫猥な音が、ぬめる体液をその指全体で感じたような錯覚に、たびたび陥らせた。それはワタシのどこかに残っている、あのころの自らの体験を重ね合わせているからなのか―――。
さすがにワタシの一部は、彼女の下半身の内部に入り込むことは叶わなかった。が、それでも彼女の喜悦が、初回よりもうわまわっていることを察するのは、盛大に波打った姿態と、それに続いた、手で塞いでいるようであってもさっきより遥かに大きく漏れ聞こえる悲鳴。
ほぼ毎週末にくり広げられるこの彼女とワタシとの密事で、思考はいつも、同じ仮定を展開させる―――。
最上の快楽は、やはりひとりきりでないと、味わうことができないのではないだろうか……。
だがこのとき、彼女はいつもワタシを褥に引き入れる。―――だからといって、ワタシの存在を考えれば、これでもひとりきりの行為ととって間違いはない。
が、彼女の一連の行いは、ワタシに人格を与えてくれているそれではないか。
もしや、最上の上に位置する最高の感動は、同性―――女同士ではじめて得ることができるのかもしれない。―――と。
あくまで想像。―――しかし、事後、ワタシを横にして幸せそうな寝息を立てる彼女を見ていると、それが真理のような気がしてならなかった。
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