(一)

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 ちょっと恥ずかしげ緩んだ彼女の表情に興味を得て、訊いてみた。そこには、近いであろう歳ゆえからきた気安さもあって。 「あ、いえ、すいません。―――実はそのサイト、私もよく見ていて」  彼女はスマホに再び視線を移すといった。わたしの指は、画面を、メールアプリから小説投稿サイトのトップページへと無意識に戻していた。 「あ、そうなの」  こっちも言葉の頭に「あ」を思わずつけてしまったのは、多少なりともの驚きがあったから。 「はじめてそのサイト見ている人と逢いました」  といった嬉しそうな語り口は、すっかり普通の女子高生っぽいものになっていた。 「学校内でも利用している子や読んでいる子、いなくて」 「そう。―――じゃあ、ここで書いてるの?」  笑みで返すと、 「読み専なんです」  彼女は続けた。 「有名作家のも読むんですけど、意外とこういうサイトに載っている作品にも面白いものが結構あるから。―――というか、どちらかというと、今ではこういった無名の人たちのもののほうが好きかも。それに、ただだし」 「そうかもしれないわね」 「お客さんが少ないときとか、まあ、いつも少ないんですけど、だいたいそのサイト開いてます。オーナーもべつに構わないっていうし」  自然と浮かべていたのであろう彼女の笑顔は、美形を可愛らしさに転化させていた。 「一番ホラーが好きなんです」 「へえ~」 「『明日に』っていうペンネームの作家さんが特に好きで。―――知ってます?」 「え、いえ」 「秀逸だと思います。コンテストにも最終選考まで残ること、結構あって」 「そうなんだ~」 「早く次の作品投稿されないか待ってるんですけど……。  あ、お客さんも書かれてるんですか?」 「え、あ、いえ、わたしも読み専」 「そうだったんですか。―――あ、ごめんなさい、ぺらぺらしゃべっちゃって」  と、その(つや)やかな唇を掌でまた覆った彼女は、 「どうぞごゆっくり」  接客用の口調に戻し、背を向けた。―――が、「あっ」と、思いだしたような声とともにふり返り、 「ご用の際は、このボタンでお呼びください」  メニュースタンド脇にあった、小さなあんまんのようなボタンを示した。  なんだかファミレスみたいなシステム、と内心で苦笑しながら、でも、「はい」明るく返し、包装からだしたストローをグラスにさした。そこで、「あっ」こっちも思いだした。
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