(四)

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(四)

     (四)  ノックの音が、彼女の意識を夜空から戻した。 「はい、どうぞ」  ふり向きながらかけると、ゆっくりとドアは開き、そこに、差し込む廊下の明りを背にした久江の姿。 「お食事の用意が整いましたので」 「あ、ごめんなさい。あの彗星見るだけのつもりが、つい、ほかの星たちにも見とれちゃって……」 「そうですか……。そういえば今夜でしたわね、新しく発見された彗星。今度のは七七年に一度とか……」  陰になっている表情が返した。 「ええ」  応じてから、「すぐいきます」とつけ加えた彼女は、今一度目を窓に戻した。  が、返ってくる返事はなく、また、ドアを閉める音も……。  不審が、彼女の首を再び背後にふらせた。  するとそこには、未だドアの前に立ち続けている久江のシルエット。だが、その顔だけは、人形の座るソファーにじっと向けられているように見え―――。 「……どうかなさった?」  微かな訝しみを含ませた問いかけに、びくっと肩を震わせた久江は、その面を彼女へよこした。 「いえ……。お早めに。冷めますので」  そしてやっと、伸ばした背筋(せすじ)は閉められたドアに消えた。
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