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エリカの部屋は変身アイテムで埋まっていた。
「これで百個目かぁ」
素材も形状もさまざまでひとえに変身アイテムといっても千差万別であることがわかる。
魔法少女に変身しないとはいえ、これだけキラキラと輝いた変身アイテムがあると心が踊る。
エリカは手元にあるコンパクトを拾い繁々とそれを見つめる。
「最近はコスメとかお洒落系の変身アイテムが多い気がするな」
メモメモ、とノートに筆を走らせる。
魔法少女になるのは断るのに、変身アイテムを貰うことは断らない。
エリカは勧誘を断る度に魔法少女たちの変身アイテムを受け取り、収集する。
変身アイテムの特徴や習性を記録に残すことがエリカのやるべきことだからだ。
夢谷エリカは魔法少女にならないのではない。
なれないのだ。
「だって既に私は夢谷エリカに変身しているからね」
頭が良くて運動神経抜群、誰からも好かれる人気者。
まるで物語の主人公になるような魔法少女の器を持つ女の子。
そんな人物に変身すれば、奴ら魔法少女は絶対に自分を仲間に入れようとしてくる。
「まさか私が変身アイテムを研究している悪の幹部なんて思わないだろうな」
いつのまにか愛嬌のある少女の顔は剥がれ落ち、中からは怪物のような顔が現れた。
「フフフ……思いのほか上手くいった。奴ら、私を仲間に入れたいばかりにベラベラと自分たちの情報を提供してくれたからな」
エリカが魔法少女になることを保留することにより、奴らはエリカをどう勧誘するかに夢中になり、別の魔法少女になる人材を探しだすことが疎かになる。実際変身アイテムはエリカの元にある。
つまり、新たな魔法少女が量産されることもないのだ。
怪物は鋭く長い爪でコンコン、とコンパクトを叩く。
「これで街にいる魔法少女たちの弱点は把握した。あとは上に報告して侵略するのみ」
頬まで裂けた口を大きく開けエリカだった怪物は笑った。
「我々イジワールの勝利だ! 覚悟しておけ魔法少女ども!!」
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