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62 結婚パーティーにて
「よろしゅうございました。
しかし、診察にはまだ通ってくだされ。」
私もにっこりと笑って一応釘を刺す。
「そなたの様な薬師がおれの国にも居ればな…
どうだ?
ソフィアの国に来ぬか?」
「私はこのメイスの国に大きな恩義がございますゆえ。
残念ながら…」
「そうか…
それもそうだな。
あぁそれでは、礼を込めて、そなたを今度おれの城の晩餐会に招待したいのだが…」
「ありがとうございまする。
しかし、パーティーなどはどうも苦手で…」
「野外オペラなどもあるぞ?
それに、仮面仮装晩餐会だから、誰が誰かもわからぬ。」
ガーイル様はおっしゃる。
仮面仮装晩餐会?
それはちょっぴり楽しそうだ。
というか、野外オペラを見てみたい。
「行ってもよろしいのですか…?」
「もちろんだ。
楽しむといい。」
ガーイル様がそう言ったその時…
「マリーナ!」
よく通る低い声がした。
「シャルルダルク様…」
「ガーイルか…」
「これは、これは、シャルルダルク。
ずいぶんな挨拶だな。」
「ふん。
お前など、これで十分だ。」
シャルルダルク様は吐き捨てるように言った。
「マリーナ、こっちに来い!」
「今ガーイル様と話しておりまする。
いきなりやって来て失礼ではごさりませぬか。」
「ガーイルなどと話す必要はない。」
「必要かどうかは私が決めまする。」
私たちは相変わらずの言い合いになる。
「はっはっはっ!
切れ者で有名なシャルルダルクがこうも焦っているのを初めて見たわ!
安心せい。
マリーナを口説いてはおらぬ。
今は、な。
まぁ、でもここは一旦引こう。
では、マリーナ。
また、診察で。」
そして、ガーイル様は去って行った。
「ガーイルはいけすかぬ。」
「それは、ガーイル様がおっしゃるセリフでしょう…」
「こ、こ、この間の事だが…」
「あぁ、私を酔わせて襲った件でございますね。」
「本当に何もしておらぬのだ!」
「信用なりませぬ。」
「何かされたか、されてないか、ぐらい分かろう。
いや…
つまり、その…
悪かった…
もう2度とせぬ…」
シャルルダルク様が初めて頭を下げて謝った。
うーん…
「本当でございますね?」
「誓って…」
「分かりました…はぁ…
仲直りと致しましょう…
2度目はございませんよ?」
私は釘を刺す。
「あぁ。
もちろんだ。」
そうこうしてる間に、ラヒト様とダーニャ様がタキシードとドレス姿で現れた。
その日のダーニャ様はそれはもう美しく、そして、幸せいっぱいそうであった。
「おめでとうございまする。」
「ありがとう。」
結婚パーティーの食事の後、ラヒト様とダーニャ様がファーストダンスを披露した。
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