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64 レガット様の横笛
ダーニャ様とラヒト様の結婚パーティーも無事終わり、私は相変わらず薬部屋で調合を楽しみ、週に一回はメイナス病院に診察に行っていた。
そして、今日はレガット様が私の部屋にお越しになっていた。
レガット様は横笛を鳴らし、サリーやレイラ、ミモザはその音にうっとりと耳を傾けている。
美青年は何をしても絵になるらしい。
「横笛はいつから習っておるのですか?」
とりあえず、ひと段落調合を終え、私はレガット様に話しかけた。
「英才教育であったゆえな。
もう、5つの頃から習っておる。」
ふぅん。
王子も大変だ。
「なるほど。
レガット様の笛の音は、レガット様同様穏やかで優しゅうございまするね。」
「ははは!
マリーナ、それは殺文句というやつだぞ?」
レガット様は笑ってそう言った。
「本心にございますれば、そういうつもりでは全くございませぬ。」
「全く、あなたは本当に困った人だ…」
「?」
「ところで、そなたは楽器は弾けぬのか?」
「いえ、ハープを少々…
しかし、楽器よりは歌う方が好きでございます。」
「ほぉ?
そう言えば、今度宮廷で音楽会がある。
そこでオレは横笛を、シャルルダルク兄上はピアノを披露する事になっておる。
ぜひ、見に来てくれぬか?」
レガット様がサラッと言う。
「え?
シャルルダルク様はピアノを弾けるのですか?」
「兄上のピアノは、それこそプロ級だと言われておる。」
「へー…
そうなのですか…」
プロ級…
シャルルダルク様には苦手な事などあるのだろうか…?
しかし、最近忙しいな。
ガーイル様からは仮面仮装晩餐会に誘われるし、今度は宮廷音楽会か…
そろそろ、仮装用の服も作らねばなるまいし…
「どうかしたのか?」
「いえ、ガーイル様に来週の仮面仮装晩餐会に招待されておるので、洋服を仕立てねば、と考えておりました。」
「へぇー…
ガーイルのヤツ…
オレは誘われておらぬがな…」
「黄疸の治療のお礼にございましょう。」
「そなた、そんなに鈍くてよく生きていけるな。」
「なっ!?
鈍くなどございませぬ!」
「とにかく、ガーイルには気をつけよ。
あやつはかなりのプレイボーイだぞ。」
「シャルルダルク様とレガット様で慣れておりまする。」
私は言う。
「それはずいぶんな言いようだな…
俺と兄上は本命には奥手なのだぞ?」
「………」
それから、レガット様と他愛無い話をして、レガット様は"また来る"といって政務に戻っていった。
「サリー、私は鈍く無いよな?」
ちょっと気になったので、サリーに聞いてみる。
「は、はぁ…
私の口からは申し上げられませぬ…」
サリーはそう言って目を逸らした。
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