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66 血病か!?
そしてその日、ガーイル様から招待された、仮面仮装晩餐会がソフィア国で催された。
私はミイラ女のドレスを着て、ミイラメイクをし、黒のブーツを履いて、仮面を付けた。
なるほど、これならば、誰が誰かはわからぬな。
馬車で2時間ほどかかり、ソフィア国のガーイル王子の城に着いた。
城は、仮面仮装した人々で溢れていた。
私は飲み物を取ると、野外オペラが見える席に向かった。
今日の演目は桜姫のようだ。
高級娼婦と青年の恋…
素敵だわ…
私はオペラの世界に浸った。
オペラと食事が終わり、私はそろそろガーイル様にご挨拶して帰ろうと思った。
その時、女性の悲鳴が上がり、「血病だ!」「逃げろ!」「近づくな!」などの声が聞こえてきた。
私は悲鳴の上がった方へ駆け寄る。
そこには、吐血して倒れている高齢の女性がいた。
「母上!
母上!」
狼男の仮面を取ったガーイル様が高齢の女性を抱き起こす。
私は仮面を外して、言う。
「通してくだされ。
私は薬師にございます。
病人の手当を…
ガーイル様、一旦部屋に皇后様をお運びくだされ。」
私は言う。
「マリーナ…!
あ、あぁ、分かった!」
ガーイル様は皇后様を部屋に運び、ベッドに寝かせた。
皇后様は意識が混濁しているようであった。
私は脈を取る。
頻脈だな…
「マリーナ、どうだ?
母上は大丈夫なのか…?」
「まだ、なんとも言えませぬが…
恐らくこれは、血病などではございません。
血病であれば、鮮やかな赤い血が出まする。」
「では、一体…?」
「恐らく…」
「ん?
ここは?」
その時皇后様が目を覚まされた。
「神皇后様、私は薬師にございます。
すこし、触診をさせていただいてもよろしいですか?」
「母上、マリーナの腕はおれが保証します。」
ガーイル様が言う。
「え、えぇ、ガーイルがそう言うならば…」
私は腹部を触診した。
「ここは?」
「痛みます…!」
「ふぅ…
やはり、皇后様は胃潰瘍にございます。」
私は触診を終えて言った。
「イカイヨウ!?
治るのか?」
「とにかく安静が1番にございます。
胃潰瘍には、私の医学では、特効薬は残念ながらございませぬ。
が、一応助けになる薬を置いていきまする。
それと、食べ物は、キャベツのコンソメ粥を作り、食べさせてくだされ。
ここに、作り方を記しておきますゆえ。」
「分かった…」
「安静にし、薬と食べ物で、治る可能性は大きいかと思いまする。
こんな時こそ、ガーイル様はあまり落ち込まれませぬように…」
「あぁ…
助かったぞ、マリーナ。」
そして、私は馬車に乗り、メイス国へと帰って行った。
ふぅ、しかし、いろんな所で病人と遭遇するものだ。
そんな事を思った。
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