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67 母上の一喝
sideガーイル
それから、マリーナは1週間置きにソフィアの国にやってきて、母上を往診した。
3週間も経つと、母上はみるみる内に病が良くなり、胃の痛みもほとんど無くなったと言っていた。
そして、母上はマリーナの事をいたく気に入ったようだった。
そんなある日、母上から呼び出しがかかった。
王都に新しく建てるホテルの事だろうか?
それとも???
おれは?で、とりあえず母上の元に向かった。
「ガーイル、良く来ましたね。」
「母上、お元気そうで安心しました。
しかし、一体何のご用ですか?」
「あのマリーナという薬師に私は命を助けられました。」
「え、えぇ…」
それが、一体どうしたのか?
「そして、マリーナに関して調べてみれば、メイス国の後宮のほとんどの病を治し、国医までも医術勝負の上破ったというではありませんか!
しかもマリーナは侯爵家の出身。
家柄も申し分ありません。」
「は、はぁ…」
要点が掴めなかった。
「あの娘をそなたの妃として迎えるのです!
あの娘の薬師としての腕はきっと我が国の宝となりましょう!」
母上は言う。
「いや、しかし…
メイス国の第3王子と第4王子がマリーナを気に入っておってですね…」
「まぁ、それならば、さらに急がねば!!!
ガーイル、あなたそれでも男ですか!
マリーナを奪ってしまいなさい!
私もあの娘ならば、そなたの妃として納得しますのよ!!!」
「しかし、向こうにも気持ちというものが…」
おれは母上の勢いに圧倒されながらも言う。
「あら、そんなの、あなたほどの美しい王子に言い寄られて嫌な気はしまい!
あなたこそ、どうなのです?」
「おれは…向こうがそうならば…その…」
「母上の礼だと言い、デートにでも誘いなさいな。」
「しかし…」
「さぁ、早く!!!」
母上に気押され、俺はマリーナに文を書いた。
それはおれとて、出来るならば…
初めて会った時から、あの媚びない凛とした瞳に惹かれていた…
だが、ふと、隣を見ればマリーナを見つめるレガットや、マリーナに微笑むシャルルダルクが居た。
美しい姫君なら、ソフィア国にも腐るほどおる。
めんどくさいことに神経使うなど、おれの性ではない。
そう思って、諦めようとした。
しかし、彼女はおれの命を救い、また、母上の命までをも救ってくれた。
そして、今日母に言われ、おれはマリーナを口説き落としてみようではないか、と決めた。
シャルルダルクがなんだ?
レガットがなんだと言う?
おれにはおれの魅力があるはずだ。
そして、万年筆をとり、文を書き始めた。
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