17人が本棚に入れています
本棚に追加
「でも、ここからは視聴者の投票ってことになったから、有名人はちょっと有利だったかもしれないよね。それは、しょうがないね」
オンライン投票一位の国木田ののかは、てんぐ#さんが以前プロデュースした少女グループトレンディ娘のセンターをしていた。
しかし、海外留学したいと言って芸能界を引退した。
それから七年、突然ドラゴンヴォイスコンテストに応募して話題となった25歳だ。
「だから、ののかがオンライン投票一位ってなった時は、俺、ヤベエって思ったわけよ。出来レースとかって言われちゃうかなって心配した。でもさあ、あいつ当時の百倍くらい歌が上手くなってんのよ。あいつ、すげえわ」
トップテンに入った人は他にものど自慢、歌うま番組や、コンテストの入賞経験者ばかりだった。
「でさ、三位の轟エマさんと、十位の大迫恵さんの二人は全く無名の、普通の女子高生ってのが驚きだったよね。特に十位の大迫さん、素朴であったかい歌声で俺すごく気になってるんだけど、皆はどう?」
コメント欄は賛成意見があふれていた。
トップテンの歌声を何度も聴き直しながら、てんぐ#さんは、十人の候補者を半分の五人に絞っていく。
「あと俺ちょっと中毒症状おこしてる声があるんだよね。三位の轟エマさん。彼女の声って忘れられないでしょ。夢に見そうな声っていうの? あの声、好きだわー」
モデルのジュンジュンのクラスメートという話題性も話され、コメント欄には、好意的なコメントが並んだ。
てんぐ#さんは、三時間かけて最終候補者五名を選んだ。
エマは二次審査に合格した。
ドキドキしながらわい生を視聴していたエマと潤子は二人で手を取り合って喜んだ。エマは生まれて初めて自分の喜びを人と分かちあった。
潤子の存在はエマにとってかけがえのない存在となっていた。
最初のコメントを投稿しよう!