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「カンパーイ」
エマの家でエマと潤子は二次審査通過のお祝いをしていた。
最近はお互いの家を行き来する仲になっていた。最初、エマの母親が潤子を手料理でもてなすと
「私の母は夜の仕事で、今まで手料理など食べたことがないんです」
と潤子が感激した。
美味しい美味しいと細い体で次々と料理を平らげた潤子に、エマの母親は喜んで毎日でも良いから夕食を食べに来るようにと勧めた。
それ以来、潤子はエマの家に入りびたりになった。
「親友」そんな言葉がエマの頭をよぎると胸がどきどきして嬉しくてどうしようもなくなる。それでも、エマの顔は無表情なままだった。
気持ちが表情に現れて笑える日は来るのだろうか?
エマは鏡を見ながら笑顔を作ってみるが、醜く顔がひきつるだけだった。
「ねえ、エマが優勝したら私を榊原奏快に会わせてね」
榊原奏快って誰? エマが不思議そうな顔をすると潤子はファッション雑誌を取り出した。
「彼氏にするならイケメン研究員!」という見出しの横に真剣な顔で薬品を調合する白衣の青年の姿があった。
俳優のような美貌に目を奪われる。
「妙快製薬の御曹司でノーベル賞候補と言われるアメリカのホワイト教授の愛弟子。女性ファンも多いんだよ。私、憧れているんだ」
潤子が雑誌を胸に抱くようにしてうっとりと言う。エマはこの御曹司と潤子ならお似合いだと思った。
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