9.潤子の本当の目的

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「会わせるなんてそんなことできるのかな?」 「授賞式に連れて行ってくれればいいの。だから、絶対優勝してね」  潤子は本物の御曹司と出会って恋して玉の輿にのるのが夢なのだと言った。  エマは驚いた。  潤子は自分の人生を自分の力で切り開きながら生きる凛とした女性だと思っていたのに玉の輿だなんて。  少しがっかりする気持ちと、親友の幸せを願う気持ちが複雑に混ざり合った。だが、この美しい潤子があの古い団地に住んでいる姿は、掃き溜めに鶴といった感じがする。  きっと御曹司と結ばれれば潤子に似合う世界で一層美しく輝けるのだろうと思った。 「わかった。潤子の為にも私絶対優勝するね」 エマがそう言うと、潤子はエマの首に抱きついて言った。 「エマ、大好きよ。全力で応援するからね。エマなら大丈夫」  エマは心臓をきゅんとつかまれる気がした。  家族以外の人の優しい思いを受け止めるのは初めてだ。  優しい友情って、なんて気持ち良いのだろう。
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