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10.妙快製薬本社ビルにて
おしゃれなカフェやアパレル会社、輸入家具店などが軒を連ねる川沿いにひっそりとたたずむ古いビルがある。
どっしりとした外観は関東大震災後に建設されたというモダンな建物だ。その当時としては画期的なビルだったと思われる。
時折ファッション雑誌が撮影を申し込むというこのビルが妙快製薬本社である。
外観とロビーは当時のままだが、その他は改装されて機能的なオフィスとなっている。エマはビルの前に立つと大きく深呼吸して受付へと向かった。
エマは奇妙なデザインのペンダントをつけていた。
トルコのナザールボンジュウという目玉のお守りだと言って潤子がエマにくれたのだ。
「私が傍にいて見ているからリラックスしてね」
潤子の優しい言葉を思い出すだけでエマは嬉しかった。
控室に集められたのは三次審査に残った五名だった。
係員は審査員のてんぐ#さんが渋滞で到着が遅れていると言った。
審査開始が遅れるので、控室に置かれている飲み物や食べ物を自由に食べて待っていて欲しいと頭を下げて出て行ってしまった。
年齢も立場も違う五人は控室に残されて困惑したようにお互いを伺っていた。でっぷり太った大柄な女の子が立ち上がった。
太った体にフリルだらけのカラフルな服を着ていた。
「ハーイ、皆さん。私は高見結子と言います。ちょっとそんなひきつった顔してないでリラックスしない? 私たち、一万人の中から選ばれた五人でしょ。もちろんライバルだと思うけれど、奇跡的な確率の出会いよ。私は皆と仲良くなりたいわ。審査が始まるまでにみんなでメルアド交換しましょうよ」
皆は顔を見合わせていたが、それぞれ結子とメアドの交換を始めた。
エマも結子とアドレスの交換をした。
豪快で陽気な結子は押しの強い感じでなんとなく断れなかったのだ。
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