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「あのお、緊張すると喉乾きません?」
ブレザーの制服姿の女の子が人懐っこい笑顔で皆に話しかけた。
彼女は飲み物の置かれたテーブルに行って紙コップにジュースを入れ始めた。エマは手伝った方が良いかと思って近づいたが、その子は振り向いて言った。
「私一人で大丈夫。どうぞ、座っていて」
エマは謝りながら椅子にすわった。彼女は皆にジュースを配ったが、エマの分は無かった。
通りすがりに耳元で「自分で入れて」と囁かれエマはなぜか意地悪をされたことに気づいた。その子は皆にジュースを配り終えると
「せっかくですから、自己紹介します。私は大迫恵十八歳高三です。歌は子供の頃から大好きで暇があれば歌っています。このようなコンテストに出るのは初めてで最終審査に残れて驚いています。よろしくお願いします。今日の出会いに感謝しまーす」
そう言うと、乾杯するようにジュースを掲げ一気に飲んだ。
それにつられてジュースを口にした大人っぽい候補者が口を開いた。
「私は国木田ののか、元トレンディ娘でアメリカの音楽スクールに留学していました。夢はブロードウェイのスターだけどなかなかオーディションに受からなくて。もう一度初心に帰ろうと思って日本に戻ってきました。このコンテストでチャンスをつかむつもりです」
ジュースを飲みながらののかを見ていた子が立ち上がった。
「あの、私は笹山涼子二十歳です。カラオケの番組で五週連続満点を出してチャンピオンになりました」
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