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1.水竜の夢
岩肌を流れ落ちる清らかな水は、細かな水しぶきをあげて周りの老木を艶やかに見せている。
滝つぼへと吸い込まれた水は底知れぬ碧(あお)の中へと消えていく。
一陣の風が吹き抜けると、美しい声が聞こえた。滝の傍で娘が歌っていた。
娘の声は高く低く波打つようにメロディーを刻む。
徐々に娘の声は強く激しく周りの空気をゆらしていく。
激しい滝の音と競うように娘の声が高らかに響いた時、滝の音が聞こえなくなった。
突然逆流するように滝つぼの水が持ち上がった。
水柱は滝の水をまきこみながら激しくうねる。
美しい歌声に合わせて水が跳ねるように踊った。
娘は、滝のうねりに共鳴するように声を震わせた。
すると、踊っていた水柱の動きが緩やかになり、水しぶきをあげながらその形を変えていく。
うねうねと揺れる水柱の肌に透明な鱗が現れた。
光が鱗に反射して動くたびに虹の色が現れる。
鱗に覆われた大蛇の様に見えた胴に四つ足が現れた。
四つ足の先には鋭い爪が見える。うねる度に爪の先から水が跳ねて光る。
透明な竜だ。いや、水の竜だ。
大きく裂けた口と大きな瞳、髪のように流れる髭と角がはっきりとした形になって現れる。
滝そのものが一体の竜にと姿を変えた。
全身から水を滴らせながら竜は動きを止めた。
巨大な水の竜は、娘を見据えた。竜の目から大粒の涙が零れた。
すると娘が水竜に向かって深々とお辞儀をした。
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