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思う存分、気の済むままジャックくんを褒め散らかした後にふと気がつく。
「春日井先生に報告しないとね」
テーブルの上に置かれた彼のスマホを指差して言うと、さっそくジャックくんはウキウキとした様子で電話をかけ始める。
「あ、センセー! 高卒認定試験、合格しました! それもこれもセンセーや奥さんのおかげっス! まじサンキュです!」
楽しそうに報告をするジャックくん。ブンブンと勢いよく振られる犬の尻尾の幻覚が見える様だ。
「……へ? 明日っスか? んー、ちょっと待ってください!」
大型犬なのに小型犬の愛らしさを見せる彼はスマホを少しだけ耳から離すと、私を見下ろして首を傾げる。
「予定がないなら明日家に来ないかって言ってんだけど?」
明日は土曜日で、仕事も休みだ。特に予定はないので訪ねられない事はないけど……。
「……行っても、大丈夫なのかな?」
6月にヤコちゃんは出産した。新生児を家に迎えてまだまだ慌ただしいと思うのだけど、家に行っても迷惑じゃないかな? 気をつかわせないかな? そんな心配ばかりしてしまう。
するとジャックくんは考え込む私にスマホを渡してきて、耳に当てろと仕草で訴えてくる。どうしようかと思ったが、こういうのは本人達に聞くのが手っ取り早いか。
「お電話かわりました。先生、ご無沙汰して──」
「ヒメちゃん、わたしよ」
「ヤ、ヤコちゃん!」
えー! 急に推しがくるとか聞いてないんだけど?! 心の準備がまだなんですが?!??
「ジャックちゃん、良かったわね。おめでとう。ささやかだけどお祝いをしたいから明日是非うちに来て。それにジャックちゃんとヒメちゃんに、わたし達の子どもと会ってもらいたいしね。……来て、くれるよね?」
「行くっ! 絶対に行くっ!!」
推しのお願いを断るなんて私には無理。そんな事を出来る人がいたらお会いしたいものだ。
「そう、なら待っているわね。じゃあ明日はうちでお昼を食べましょう」
「うん!」
ルンルン気分で通話を終える。
私もジャックくんも、ヤコちゃんと先生の赤ちゃんとはまだ会っていない。
「赤ちゃん、きっとかわいいだろうなぁ~」
まだ見ぬ赤ちゃんを想像してわくわくしていると、ジャックくんが大きく頷く。
「だろうな! なんたって美人のセンセーの血が──」
「なんたってかっこかわいいヤコちゃんの血が流れてるんだもんね!」
「え、あ、うん。だな……、」
あれ? なんかジャックくんの反応が悪い気がするんだけど? 気のせいかな? まぁいいや、明日が楽しみ♪
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