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翌日、私はドキドキとしながら長崎箕家の呼び鈴を鳴らす。すると中から「どうぞ、入って」とヤコちゃんの声が近づいてくる。
戸をカラカラと開いて中へと入ると、親友兼推しが出迎えてくれた。
「いらっしゃい、二人とも。それと合格おめでとう、ジャックちゃん」
ふんわりと優しい笑みを浮かべるヤコちゃんに癒されていると、ジャックくんはツカツカと彼女に寄っていて身を屈める。
ヤコちゃんはキョトンとしていたが、やがて納得したのかジャックくんの頭を撫で始めた。
「本当によかったわ、勉強頑張っていたものね」
「奥さんのサポートのおかげもあるっス!」
母親に褒められて喜ぶ子どもの様なジャックくん。きっと実の母親からは与えられなかったコミュニケーションなのだろう。
「いらっしゃい」
愛しの妻を追いかける様にやって来た春日井先生。その先生の腕の中には私とジャックくんが出産祝いに送ったおくるみに包まれた赤ちゃんがいる。
「ふたりに紹介するわね、長崎箕 春矢くんです」
春矢くん。それは両親の名前から1文字ずつ取られた素敵な名前だ。
先生の側に寄って赤ちゃんの顔をソッと覗き見る。
「か、かかかかかわいい~」
色白で大きな目をしたハルヤくんは、口を薄く開けて笑っている。なんて愛想がいい子なんだ!! それに新生児だというのに、なんていうかもう完成されたお顔をしている! しかもしかも!
「ね、そっくりだね!」
興奮しながら隣で同じ様に赤ちゃんを見下ろしているジャックくんに声をかけると、彼も大きく頷く。
「だな! まだこんな小さいのに超センセーに──」
「この眉毛、ヤコちゃんと瓜二つ! かわいい~」
「え、あ、うん。だな……、」
あれ? また反応が悪いな? 私、何か変な事言ってるかな?? なんて不安になったけど……。
「さすがはヒメチャン! そう、そうなんだ! この下がりがちの眉毛、矢い子さんに似てとてもチャーミングなんだ! 皆は俺に似ているというが、俺はこの眉毛を強く推していきたいっ!!」
あー、よかった! 父親である先生がそう言うなら私は間違えてないんだ!
「……え、ガチ勢まじ怖っ、」
ジャックくんが何か呟いているが、気にしない気にしない! ヤコちゃんが何ともいえない顔をしているがそれも気にしない気にしない!
デレデレとハルヤくんの眉毛について力説していた先生だったが、ふとジャックくんに目をやると穏やかな口調で言う。
「雀孔、おめでとう。やはりお前は地頭がいい男だったな。電気工事士2種に引き続き高卒認定試験もパスするとは、たいしたものだ」
するとジャックくんは照れくさそうにニッと笑った。
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