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その劣勢を覆そうとするわけだが……追い込まれた人間が思いつくことは、絵空事とも言うべき理想論が多く……これも例外なく実に杜撰なものであった。
最高指導者ラビエル指示の下、数多の子供たちは一定期間軟禁され、そこで延々と同じ内容の教育を受ける。そして付け焼刃の訓練を受けたのち戦地へと放たれるのである。
その教育とは、俗に言う洗脳のようなものであり、永久の幸福を得られる楽園へ行くために悪魔を倒し、天使とならなければならない宿命を背負う。そう信じ込ませるものであった。
これ即ち、政府サイドの人間の抹殺を意味していたが……十歳ほどの子供は大人達の言うことをある意味素直に聞き入れ、それこそゲーム感覚でことに当たっていくこととなってしまう。
はじめは褒めてくれるという、シンプルな心理的欲求の結果だった。しかし、数を追うごとに人格変貌へのトリガーともなっていくことに……。
そして子供の身体は小さな道や隙間を通ることができるうえ隠れやすいことで、瓦礫の多い市街地や茂みと泥濘みの多い湖沼地帯では、奇しくも政府軍の兵にかなりの痛手を負わせる結果を生み出すこととなっていった。
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