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そんな洗脳された子供兵たちのことは、政府軍の中でこう呼ばれていた
ーーグリザイユ。
灰色の狼という意味だ。
これは、破滅しゆくグリザイユとして生きた一人の少女のたった一日の出来事であるーー
剥がれ落ちた壁と部屋の区切りを失った瓦礫が目立つ家屋。その一つに身を潜める二人の姿。
両手を後ろに縛られ、打ちっ放しのコンクリート壁に背をつけて座る少女の名はゾフィ。そしてその近くで、激しい雷雨が目立つ表の様子を慎重に窺うのは政府軍側戦闘要員のジャン。
グリザイユの奇襲と自爆行為で部隊が壊滅してしまったジャンは、応援部隊の到着を待ちながらラビエル捜索任務のため、市街南部に潜伏していた。
そこで鉢合わせしたのがゾフィである。一枚上手だったジャンは、ゾフィをすぐに捕らえ捕虜として拘束。
しかし、それからすぐになぜか撤退命令が下った。内容は、市街地をまるごと空爆するというもの。
これは最後通告を受け入れなかった最高指導者ラビエルの国外逃亡を阻止するためとされている。
しかしそれが表向きの理由だということを、この時ジャンは分かっていた。
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