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「っは、奇遇だな。俺もこうして戦場に駆り出されてると自分がいくつになったのか忘れちまう。だからここに、いつもしまってんだ。新しい家族写真をな。これが妻のレベッカ、隣は娘のジーナだ。今年で……ああ、そう十三歳になる。お前と同じぐらいさ」
胸ポケットから出したシガーケースの中に貼られた写真。そこには平和な姿が写っていた。
しかしゾフィは反応を示すことはない。それを見たジャンは、ため息混じりに数回小刻みに頷き始める、
「……だよな、分かってる。
なあ、一つ教えてくれ。まだ経験こそ少ないはずのお前らは、どうして人を殺すのにあんな躊躇わない?」
ジャンの見てきたグリザイユの行動はいずれも常軌を逸していた。
瀕死の相手に銃を何発も打ち込んだり、ナイフで首を何度も刺すなど……まるで確実に殺さないといけないという強迫観念紛いなものが見え隠れしていたのだ。
もちろん、天使となり楽園に行くためには八十八の悪魔を殺さねばならないとされているからだが、当然ジャンはその真実を知らない。
ゾフィはさも当然のように「天使になるため……」と答えた。
「……そうかい。お前らは人を殺して天使になんのか?」
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