見参

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見参

 明らかに怪しそうな扉を前に、私は深呼吸をした。  両開きの重そうな扉。いや、重そうに見えるのはまだ私がこの先に進むか悩んでいるからかもしれない。  扉にも壁にも窓はなく、中の様子は伺えない。本当に営業中なのだろうか。そもそもこの会社の存在自体が怪しいと思う。  ホームページは隅から隅まで見たけれど、その疑いは強まるばかりだった。今更ながら本当に大丈夫だろうか。 「……決めたでしょ」   あえて声に出して、私は自分に聞かせる。  この扉の先に何があろうが関係ない。たとえ騙されているかもしれなくても、それでも私はどうしても動かずにはいられなかった。  ほんの少しでも可能性が残されているのなら。 「変わるんだ」  扉の持ち手を握る。  冷たい金属の感触が右手に伝わり「まだ引き返せるよ」という意地悪な声が頭に響く。  うるさいな。 「変わってやる」  あの子の泣いている顔を思い出す。  私は奥歯を噛み締め、勢いよく扉を開いた。  その先にはホームページの写真通り、明らかに怪しい五人組が立っている。 「いらっしゃいませ! 変身コーポレーションへようこそ!」  赤、青、黄、緑、桃。  それぞれ色の違う全身タイツを身に纏った五色の戦隊ヒーローがポーズを決めていた。
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