36人が本棚に入れています
本棚に追加
/484ページ
その問いで思わず葵さんをガン見してしまった。僕と同じ感情なのか、それとも僕の心を読んだのかは分からない。
けど、小っ恥ずかしさを押し殺して正直に「はい」と言えたことが、もしかしたらこの後の行動を変えられたのかもしれない。
「よーし!みんな!リフレッシュがてら海でも行きますか!」
葵さんの提案は、これまた唐突だった。唐突すぎたのか、女子二人はポカンとした表情でこちらを見つめる。
「海ー?」
「私は良いですけど、どうやって行くんですか?」
「それは勿論、私の車でよ!」
葵さんが指差す先には、見覚えのある車が一台。
あの可愛らしいフォルムが、野球観戦と、文化祭での記憶を蘇らせる。
そうか、あの時はよく分からなかったけど、あの無意味そうな会話は今日この日の為だったのか——。
「なんか……中、随分狭そうですけど、大丈夫ですか?」
「だ、大丈夫よカオちゃん!これでも一応——」
「『普通車』ですもんね、葵さん」
えっ?となりハッ!としてグッとする葵さんに合わせて、僕もグッと右手を送り返した。
最初のコメントを投稿しよう!