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1. 帝進会
今年は桜の開花が早いようだ。
例年であれば三月下旬に入った辺りで咲き始めるのに、十一日の時点でもう開花が始まっている。これじゃあ新学期には大方散ってしまっているだろう。
「祥吾!帰ろうぜ!いつまで寝てんだよ」
うつ伏せで寝ていた僕の背中を、親友の浩二がバシバシと叩いてくる。コイツはいつも、元気が良い。
「浩二、部活は?」
「今日は塾だからサボり。自習したい気分なんだよ」
「はえ〜、優等生は違うなあ」
いいから帰るぞと言わんばかりに、僕を羽交い締めして強引に立ち上がらせる。野球部で鍛えられた筋肉質の腕に、僕の体は容易く浮き上がった。
正午の校内には、謎の活気があった。今日が修了式で、明日から春休みというのが理由であろう。浩二も何か嬉しそうというか、浮かれた雰囲気がある。
けど、僕としてはあまり嬉しくない。もう高校生活の三分の二が終わってしまったんだ。
過ぎた時間は二度と戻らない。
この二年間、高校生らしいことは何もしていない。勉強、勉強、勉強……入学早々大学入試を無理矢理意識させられて、思い出もクソもない。
せめて部活にでも入っておけばまだ変わったのだろうか、と思っても時既に遅し。三年になればいよいよ勉強漬けの毎日。
ああ、反吐が出る。
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