1. 帝進会

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「どうしたー?テンション低くないか?明日から春休みだぞ!実質夏より長い休みだぞ!?」 吊革に体重を預けながら、顔を覗き込んでくる。浩二はいつも、電車が混んでいると僕を優先して座らせてくれる。 俺は鍛えないといけないなんて言ってるけど、多分昔腰をやってしまった僕を気遣ってのことだ。 もう大丈夫だと言ってるのに、こういうさりげない部分が多いから、こいつは人望があるのだろう。 表面上は何も考えていない馬鹿丸出し感が否めないけど。 「お前が明るすぎるんだよ。それより、塾行くんじゃなかったのか?」 「一旦家帰って飯食ってから行くわ。てか、お前もどーせ暇だろ?来ねーか?」 僕は度々浩二から塾の誘いを受けていた。良い先生が多いから一緒に通わないかと。 ただ、浩二が勧める『帝進会(ていしんかい)』という塾は、名前のイカつさからも感じ取れるけれど僕には敷居が高い。 頭が良い高校生が通っているというのが地元民のイメージだ。しかも、集団授業というからついていける訳もないし、人見知りの僕にはとても馴染める気がしない。 「だから僕には無理だって」とあしらう僕に、浩二は続ける。 「今月まで無料体験授業してるからさ、一回だけタダで受けられるんだよ。春期講習の一回だけ受けてみようぜ。タダなんだから、受けて損はないだろ?」
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