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「んー……まあ」
「よぅし!じゃあ早速、今日申し込み行くぞ!」
多分一回受けて、やっぱり無理だとなるのがオチだろう。
でも、浩二がわざわざ家に帰っているのは昼ご飯の為ではなく僕を誘う為なのではないかと思ってしまった。
考えすぎかもしれないけど、そうなると断る方が申し訳ない気がして「分かった」と了解してしまった。
「じゃあ、そーだなー……十六時二十四分着のやつで!昼寝して寝坊とかすんなよ」
意気揚々とそう言い残し、浩二は先に電車を降りた。今まで見えなかったドア横の広告をボヤッと眺める。
〈来年の春は第一志望校へ!新学期生募集中!〉
大手予備校の広告だ。やはり、年度の変わり目はどこも生徒募集に躍起になってるのだろうか。
昔と違って、学習塾は色々と厳しそうだ。噂では駅前の大手塾が今年度で閉校と聞いた。
このご時世、塾の講師なんて割に合わないだろう。浩二は面倒見が良いし頭も良いから一見向いてそうだけど、思いの外教え方が下手すぎる。まあ、本人は医学部志望だから関係ないか。
目標がある人は素直に羨ましい。僕には夢も無いし、やりたい仕事も当然無い。そもそも生きる理由も生き甲斐も無い。幸せが何かも分からない。
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