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およそ二時間後の外気はかなり澄んでいて、扉を開けた途端その空気が全身を包み込んだ。
火照った体を心地よく冷まし、鼻から吸った空気が後味を良くする。
「やべえ、吐きそう……」
心地良くなさそうな奴が若干一名……そのうち元通りになるだろう。ここまでが徒歩なだけに、すぐ駅までは帰れそうにはないけど。
「残り十分であんだけ詰め込んだら当然よ」
「秋山くん大丈夫?歩ける?」
「今は無理。百歩目くらいで吐く」
「じゃあとりあえず九十九歩歩いてくれる?」
「ちょ!?」
自然と笑みが溢れてしまうこの光景。しゃがんで背中をさする彼女に、腕組みをして立つ和田さん。
少し離れたところで突っ立っている僕も含めて——。
「楽しかったね」
いつの間にか真横に居た葵さんが、笑顔で呟いた。言葉と共に爽やかなミントが香る。
「そうですね」
「なんか、物足りなくない?」
「……えっ!?」
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