あと三分で喰えますか?

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「あー、どうかしたんすか」  少年は悩んだ結果  どうとでも取れそうな  無難な物言いをする。  彼はキョトンとした顔をして  少年の方を見つめるが  少年は何も答えない。  しばらく、お互いに沈黙のまま、見つめ合った。  席が一つ横にずれた。 ラーメンまで、あと4席。 おっさんはあと3席だ。 「いや、すまん、すまん。 まさか、君から質問されるとは」  いやはや。  感心してるのか、バカにしてるのか。  その発言は微妙なところだ。  少年は顔をそむけた。 「君は、僕を嫌いなのかと思ってたんだよ」  はぁ?  何を言ってんだこの男。  勿論、嫌いに決まってるだろ。  少年はそう言いかけた。  そもそも、少年は自分が誰かを味方だと思うこと。  それが想像できなかった。  だから  彼に声をかけたのもただの気まぐれ。  喋る練習みたいなもんだ。 「んー、そうっすか?」  適当な返事を返す。  どこまでも適当に見えるように。  席が2席スライドする。  あと2席。  周囲の雰囲気も閑散としてきた。 時間も時間だ。 もう飯の時間は終わりなのかもしれない。 「でも、俺は人を嫌いにならないっすよ」 「それはありがたい」  好きにもならないってことだけど、  このおっさん気がついてんのかな?   少年はそう思った。 「あーまぁ、良いっす」  その時、客が二人、出てくる。  やっとラーメンだ。
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