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十一月も終盤。母さんは産婦人科に入院している。母さんは大丈夫だなんて笑ってたけど、心配性の親父が万が一に備えてと無理矢理入院させた。もちろん親父は母さんに付きっきり。あんまり過保護だから母さんは、メールで俺に文句のメールを寄越す。
「お父さんの愛が痛いの……」
母さん、それはのろけです。のろけを息子に見せつけるんじゃないよ。
なので俺は母さんが出産するまで、家には一人。母さんが妊娠してから家事のほとんどをしていた親父の手伝いをしていたから、俺もそこそこに家事ができるようになった。自分のご飯は自分で作るし、ちゃんと洗濯もするし、新しい家族がもうすぐ来るかと思うと手が空いたらちょこちょこ掃除もしている。
学校だってちゃんと行ってるからね。
「また、あの車いるね……」
いつものようにみんなで登校する中、薫蘭風ちゃんが俺に耳打ちをする。薫蘭風ちゃんが言うのはここ一ヶ月、毎日学校の前にいるガラスに黒フィルムを貼った黒い車。ただ、こういうのは別に珍しくはない。この学校には俺と良くんと香多くんとげたんわくんというにょたチョコ男子アイドルが四人もいる。追っかけは普通にいるし、男の姿を見てみたいと学校の前で待ち構えてる人は普通にいるんだ。
「気にしすぎだよ。薫蘭風ちゃん」
「そうかなぁ?」
「それよりも……」
俺が前方に視線を移す。そこにはタッくんに五丁目さんにうたうものさんという大人にょたたちが手を振っていた。
「やぁみんな、遊びに来たよ」
悪びれもなく笑顔を見せるタッくん。
「今日も仲良くみんなで登校ですか。おや? 瑠璃くんはまだ女体化していないのですか?」
クイッと首を傾ける五丁目さん。
「まぁ学生服の瑠璃くんも可愛いね。さ、にょたチョコ食べよっか?」
サッと女体化チョコを差し出すうたうものさん。
この大人たちの本職は何なのだろう? しょっちゅう俺らの学校に遊びに来るんだけど?
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