指が触れる度に知りたい

指先の温度

　少なくとも相手はこちらに良くなったという反応を期待して問うているのだ。まずは相手が喜ぶことを返してあげるのが大人の対応だ。
　もちろん、似合っていて前より良ければ本当のことを言えばいいだけだ。前の髪型のほうが似合っていたら傷つけないよう今の髪型の良いところを答えるのが良い。

　私はこういう嘘をうまくつくことができない。とっさに顔色も変えず、心から褒めているように言える人のことを尊敬するけれど怖さも感じる。
　以前の髪型のほうが似合っていたと私は思っているのだから、前の髪型も似合っていたけど、今の髪型も新鮮でいいねというような褒めかたしかできない。だから問うたほうはつまらないであろう。

　自然に褒めていた人が後で前のほうが良かったよねと私にこっそり言ってきた恐ろしさは何とも言えないものがある。
　本気で今の髪型のほうが良いと思っているように褒めることが出来るのだからすごいと思う。世渡り上手ということだ。

　これは嘘も方便だ。問うてきた本人が喜んで終わるのだから誰にも迷惑を掛けていない、そのうえに喜ばれる嘘なのだから、ついて良い嘘だ。