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お客さんは、小学一年生くらい女の子でした。きっと、あの手紙の差出人でしょう。
「あ、あの、その……」
女の子は、もじもじとしながら何かを言いあぐねています。
きっと、本当に羽屋さんが特別なプレゼントをくれるのか、不安なのです。
羽屋さんには、白い髭も銀の髪もありません。それから、ぷっくりとしたお腹でもありませんし、ホッホッホ、とゆかいに笑ったりもしません。
羽屋さんの姿は、何処にでもいるような、ただのやせっぽっちのお爺さんなのですから。
「さぁ、お入りなさい」
羽屋さんはそう言って、畳の部屋に女の子を招き入れました。
部屋に入った女の子は織り機を見て、とてもびっくりしたようでした。
「すごい、おっきーい!」
女の子ははしゃいで、織り機と自分とで背比べをしています。
「君よりもだいぶ大きいやろ?」
羽屋さんは、女の子の頭に手をやって、背比べの手伝いをしてやりました。
五センチやろか。ううん、十センチもちがうよ。
暫く織り機と背比べをして、羽屋さんと女の子は遊びました。
「ねぇ、羽屋さん。わたしの羽、ちゃんと治るかな?」
遊んでいる途中で、ふと女の子が心配そうな顔をして言いました。
「大丈夫、ちゃんとつくろってやるから」
羽屋さんはそう女の子の頭を撫でてから、織り機に着きました。
ギッタン、ゴットン。プツ。
ギッタン、ゴットン。プツ。
羽屋さんは、シワシワの手で織り機を動かして、丁寧に女の子の羽をつくろっていきます。
「羽屋さん、プツって音はなに?」
首を傾げた女の子が、羽屋さんに尋ねます。
「なぁに、君は気にせんでいいことや」
羽屋さんはそう答えて、羽をつくろい続けます。
ギッタン、ゴットン。プツ。
ギッタン、ゴットン。プツ。
作業はどんどん進んでいって、あっという間に女の子の羽が完成しました。
「さぁ、背負ってごらん」
羽屋さんはそう言って、出来立ての羽を女の子の背中に当ててやりました。
「ランドセルみたい、だけどとっても軽い」
羽を背負った女の子は、その場でくるくると回ったりジャンプしたりしています。
そうしているうちに、羽はすっと、溶けるように女の子の背に消えていきました。
「あれ、羽が消えちゃった」
「羽というものは、そういうものなんや。でも大丈夫、今も君の背中にきちんとくっついているやろ?」
「うん、なんだか背中があったかい気がする」
女の子は、ほっとしたように自分の背中を触り、続けました。
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