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「あのね、わたし、色んなことを失敗しちゃったんだ。学校の作文も出来なかったし、お絵描きも、ピアノも全部失敗しちゃったんだ」
話し出した女の子は、その時の事を思い出しているのか、なんだか少し泣き出してしまいそうです。
「失敗することは、誰でもあることやろ?」
「うん、でもまた失敗するのが怖くて、何も出来なくなっちゃったの」
女の子はそう話して、溢れ出た涙を服の袖で拭いました。
「人はひどく脆い。だから、失敗するごとに羽が欠けてしまうんや。本当はもっと遠くまで飛べるはずなのにね」
羽屋さんは、女の子の背をそっと優しく撫でてやりました。
「一度失敗しても、臆病がらずにまた挑戦してごらん。羽なら羽屋さんが何度でもつくろい直してやるから」
「……でも、羽はどこから持ってくるの?」
そう聞いてから、女の子は、はっとしたような顔をしました。
あの、プツリという音は、実は、羽屋さんが自分の羽をむしる音だと言うことに気がついたようです。
「私はいいんや、もう歳だしね。それよりも君のような、まだ沢山の未来がある人たちに羽をあげたいんよ」
羽屋さんは、そう言ってにこりと微笑んでみせました。
✳︎
「羽屋さん、本当に本当にありがとう!」
玄関を出た女の子は、そう言って羽屋さんにぺこりと頭を下げました。
さようなら、と羽屋さんは女の子に手を振って別れを告げました。
女の子は、坂道を元気よくかけていき、頂上で、大きくジャンプをしました。
遠くまで高く、高く飛んでいけ。
羽屋さんはそう願いながら、欠けた翼で、粉雪が降り出したどこまでも高い空を望みました。
羽屋さんはこれからまた、誰かのために羽をつくろうのです。
クリスマスの今日、あなたにも、きっと素敵な〝羽〟が届きますように。
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