もうすこしだけ

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「ただいま」 半年前に仕事でこの部屋から出ていった、彼氏が苦笑いで立っていた。 「え?何?急すぎでしょ?連絡してよ」 「驚かせたくて…」 てへっ、と笑う彼にため息をつきつつも抱きつく。 「驚きすぎて、心臓止まるって…」 「や、それは困るよ!…ごめん」 彼の方が背が高いので、頭が胸の下、回した手が背中まで回らない。 だから、少し屈んで覆い被さるようにギュッと抱き締め返してくれる。 「戻って来たから、許す……お願い、もっと強く、強くギュってして?」 こんなに甘えた事は、ない。 子供の頃から思い出しても、可愛げのない意地張りの性格で、甘えた記憶がない。 下に弟がいるからか、我慢をする事を覚えた。 高校で出会った彼は、そんなところを気づいてくれた。 「いいよ。座ろ?」
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