ねだられても

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ねだられても

「ね。もう少しだけ見てたいの。お願い」  ウルウルした目で見上げてくるのは、年の離れた妹。  どうして下の子ってのは、要領を得てるんだろうなぁ。  どこかで学ぶのか、研究でもしてるのか。  あざとい角度に首を(かし)げ、可愛く作った声を出す。  しかし。だからと言って、そのお願いがいつも通るとは限らない。  ましてや、今回は違うだろう。 「ダメだよ。昨日買ってきたばっかりだろ。お前が見てると、用心してエサ食べに来ないよ」  水槽に散らしたエサに、目の前でメダカが群がってくれるには、まだ時間がかかる。  妹のおねだり作戦。  僕はもちろん、メダカに通じるはずがない。 「慣れるまで、離れてろよ」  ぷう。  不満げに頬を膨らませた妹は。  水槽下に頭一つ隠して、メダカの様子をのぞいてた。  執念だなぁ。と、僕は思った。        ― おわり ―
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