応援

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応援

 僕はいつも、心の中でだけ、声をかける。  口に出したら、怪しい人だからだ。 (がんばれ。もう少しだけ、がんばれ。もうちょっとだぞ)  家横の側溝(そっこう)。そのグレーチング蓋の隙間から見える。  緑の葉っぱ。  なんの植物かわかんないけど、排水路に芽吹いて、金属格子(こうし)のすぐ下まで伸びて来てる。あと少し育てば、地上に葉っぱが出る寸前。  出たところで、何があるわけでもないけど。  むしろ風に吹かれたり、人目について抜かれたり、大変かも知れない。  でも、頑張ってるんだなぁ、と思うと、つい応援したくなる。 (今日も元気そうで、良かった)  通学前の、そんなささいな日課(ルーティン)。  だったけど。 「おっ! ついにやったな!!」  あ。声に出しちゃった。  葉っぱが、外の世界に顔を出していた。  ちょこんと。  朝日を浴びた緑が、とても誇らしげで。  いいもの見れた。  良いこと、あるといいな!        ― おわり ―
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