2人が本棚に入れています
本棚に追加
「うぅむ……」
地球からやって来たその男は、出されたシチューを一口食べるなり、眉をひそめた。
大きな長方形のテーブル席には、同じく地球からやってきた仲間が、ほかに四人腰をおろしている。彼らと目を合わせた。
全員が眉をひそめる、とまではいかないものの、ある者は表情を消し、ある者はこっそりとため息をついている。期待したほど美味でないことに落胆しているのは明らかだった。
「いかがですかな、我がナルボン星の料理は?」
にこやかな笑みを浮かべてそう訊ねたのは、テーブル席の中央に位置する男だ。ゆったりとした白い服を着ている。このナルボン星で、通商交渉を担当する司祭である。
彼はナルボン星生まれの、ナルボン星人である。といっても、耳たぶが少し大きいくらいで、地球人とさして外見は変わらない。
そのおかげで、地球から来た一行は、違和感をおぼえずにすんだ。また、テーブルを囲む者たちはみな、耳に小さな自動翻訳機を装着しているので、互いの意思疎通に不自由はなかった。
彼らはいま、迎賓館のなかに設けられた食堂で、ディナーをいただいている最中である。
「まあ、そのぅ……」
司祭の横に位置する男が、言葉をにごす。最初にうなり声をあげた男だ。地球から来たグループの団長である。
団長は口ごもりつつも、言葉を続けた。
「なかなかに興味深い味ではあるのですが、そのぅ……」
最初のコメントを投稿しよう!