尊い犠牲

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◇◇◇  地球の一行が出ていったあと、司祭は調理場に足を運んだ。料理人たちに、今日の料理について、ねぎらいの言葉をかける。それが終わると、となりの部屋に入った。  三つ並んだベッドの上に、先ほどの少年たちが横たわっていた。 「お前たち、具合はどうかね?」  気づかう司祭に、最初に出ていった少年が答えた。 「はい、司祭さま、ひどく気持ち悪いです」 「そうか。大変な思いをさせたな」  すると、二番目に出ていった少年が(たず)ねた。 「司祭さま、地球の人たちの味覚は、どうなっているのでしょうか。よりにもよって、ぼくたちのゲロゲロが大好きだなんて」 「うむ、宇宙は広いということだ。お前たちのゲロゲロ入りのミートシチューは、大変に喜ばれた」 「ぼく、気持ち悪くて、しばらくは食事をとれそうにありません」 「時間をかけて、少しずつ治しなさい」  司祭はやさしく少年の頭をなでたあと、姿勢を正した。 「ともかくだ、お前たちの(とうと)犠牲(ぎせい)のおかげで、わがナルボン星は、よい条件で契約を更新できたのだ。深く感謝するぞ」  そう言って、司祭は少年たちに頭を下げたのだった。                               〈了〉
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