尊い犠牲

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「いえ、わたしはもうおなかがいっぱいで。もしよろしかったら、わたしの分もどうぞ」  司祭が自分の分の皿を、団長のほうへ押しやる。  さすがに団長は遠慮した。グループのなかで一番体格のよい男が、「ではわたしが」と、すばやく皿を持っていった。  地球からの一行は、ガツガツとシチューを食した。司祭からもらった分もふくめて、たちまち各人の皿が空になった。それでも、皆は物足りなさそうな顔だった。 「いや、すばらしくおいしいシチューでした」 「そうですか。それはなにより」  団長が世辞(せじ)を述べたのに対し、司祭が笑みでこたえる。  と、そのとき、二皿をぺろりとたいらげた男が、遠慮がちに声をあげた。 「そのう……おかわりはないのですかな?」  ()びるように(いや)しく笑う男を、一行の誰も責めようとしない。皆が同じ気持ちだったからだ。 「そうですな……」  司祭はためらいがちに、また後ろをふり向いた。  少年はふたり残っている。そのかたわらに立つ兵士もふたり。  ふたりのうちの右側の少年が、ふいに、ひっく、と涙を流しはじめた。 「ぼ……ぼく……どうしても、ですか?」  懸命に涙をこらえようとして、こらえきれないといった様子だ。 「これ、泣くな。お前たちはこのために生かされているのだから」  司祭は重々しく少年に注意すると、兵士に「連れていきなさい」と命じた。  兵士は泣きつづける少年の腕をつかみ、かなり強引に部屋の外へと引っぱっていった。
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