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地球の一行は顔を見合わせた。しんと押し黙る。ようやく彼らは、先ほど出されたミートシチューの秘密に感づいたのだった。
青ざめる彼らに向かい、司祭が再びにこやかに言う。
「申しわけありませんが、また少しお待ちいただけますかな。その間、わたしの話を続けるとしましょう」
そうしてまたハープの演奏が続くなか、司祭の話が始まった。今度ももちろんたくみな語り口で、ところどころにジョークがはさまれる。
地球の一行は、もはやそのジョークに笑う気になれなかった。うつむき、そわそわとしていた。
やがてまた三十分もたってから、給仕がワゴンを押してやってきた。寸胴からシチューをすくい、皿に入れて、各人の前に置く。
地球人たちはどきどきしながらそのシチューを見おろした。さっき連れていかれた少年のことを思いだし、手をつけるべきかどうか、迷った。互いに視線を交す。お前、先に食べろよ。お前こそ。そんな無言の言葉がやりとりされる。
彼らの迷いは長くは続かなかった。
シチューから湯気が立ちのぼり、各人の鼻先へと届く。すると、あらがいがたいすばらしい美味の香りが、鼻孔をくすぐるのだった。
一番体格のよい男が、たまらなくなって、スプーンを手に取った。それを合図とするかのように、ほかの者もスプーンを持つと、シチューをすくって口へと運んだ。
「うおぉっ!」
「なんてこった!」
皆が驚愕の叫び声をあげる。
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