尊い犠牲

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「そうですな」  と、司祭は男の話にうなずいた。「わがナルボン星にとって、地球との交易(こうえき)は重要ですからな。取引の条件が有利になるのは、まことに喜ばしいことです」 「そうでしょうとも」  体格のよい男は胸をそらす。  司祭はうしろをふり向いた。  もう残っているのは、少年と兵士がひとりずつ。最後の少年は少し青ざめ、それでも気丈に司祭を見つめかえした。  司祭は確認の問いかけを発した。 「お前は、ナルボン星のために、(とうと)犠牲(ぎせい)となるのだ。覚悟はできているな?」 「はい、司祭さま」  司祭はうなずくと、兵士に命令した。 「連れていきなさい」  兵士が少年の腕をつかもうとした。それより早く、少年は歩きだしていた。ふたりはほとんど並んで部屋を出ていった。  司祭がナルボン星の歴史の続きを語りはじめた。  もはや地球の一行はだれもその話を聞いていなかった。自分たちの欲望のために少年たちを犠牲にしたという罪悪感にさいなまれていた。その一方で、やがて出てくるはずのミートシチューを思いうかべると、口のなかにつばが()き、頭がくらくらするのだった。  やがて、彼らの前に、待ち望んだ料理が並べられた。今度は司祭の分は初めから省かれた。その分、めいめいの分量が多くなっている。
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