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一人になった俺は、全然状況が理解できなくて、悠里の探し方も分からなくて。
寂しさを紛らわすように、人の温もりを求めたけど、紛れなくて。
あの時、悠里に温められて癒えた寂しさは、物理的な温かさだけじゃ無かった事を知って、もっと寂しくなった。
3年。
両親を亡くしてからの3年は、悠里が側に居てくれたから、生きていられた。
悠里がいない3年は、悠里を探すことで、生きて来れた。
バカだけど、諦めが悪くて、寂しがり屋な俺は、あらゆる手段を使って悠里を探した。
探しながら、あの手紙に書いてあった、家族の事実と、悠里の「好き」を、ゆっくり消化しながら飲み込んだ。
父さんと母さんが生きていた頃は、本当に家族だった。
血は繋がって無くても、俺の姉は悠里だった。
二人きりになっても、俺たちは家族だった。
悠里が、自分の気持ちを押し殺して、俺の為に最後の日まで家族でいてくれたから。
高校の卒業式。
保護者席に座る悠里は、泣いていた。
「何、雰囲気に流されてるんだ。」って涙目の俺がからかったけど、あの涙は、そんな単純な物じゃ無かったのかもしれない。
あの後、後輩に取り囲まれた俺を、笑いながら見送った悠里に、卒業証書を渡そうと手を伸ばしたけど、背を向けて帰って行く悠里に届かなかった。
その夜。遅く帰った、俺を待っていて。「お父さんとお母さんにも、卒業の報告しなさいよ。」と言って面倒くさそうに照れる俺を仏壇の前に座らせた。
両親に報告した後、悠里にも言ったんだ。「ありがとう。」って。
でも、俺の声が小さすぎて、悠里の耳には届かなかった。
聞き返す悠里に「何でも無い。」って照れながら自分の部屋に逃げ込んだ。
あれが、最後の家族の時間だったんだな。
次の日、俺が遅くまで寝てる間に、悠里は消えた。
悠里の我儘をきくなんて、出来ない。
悠里に殺されるなんて、思わない。
皺くちゃになるまで、待てない。
もう会わないなんて、ありえない。
だかから、俺は探し出した。
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