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♢仙神
【ファージャック=トレオンス】
「では改めて、ワシも素手でゆくとしよう」
持っていた杖をとっさにどこかへ閉まった
【シン=アルベラン】
「行くぞ!」
ヒュイッ、ヒュイッ
シンの攻撃はファージャックにまるで当たらない
【ファージャック】
「ただ闇雲に殴るだけがお主の拳か?」
【シン】
「何言ってるんだ?そんなの当たり前だろ」
【ファージャック】
「こんな戦い方ではいつまでもワシに届くことはないぞ」
【シン】
「ならどんな戦い方なら当たるんだよ!」
【ファージャック】
「お主の場合、先に行動に出て動く癖があるが、これでは相手に先が読まれてしまう。
お主が考えるべきはワシが動くタイミング、もしくは誘導して動かすかじゃ」
【シン】
「でも相手に先に動かれたら不利じゃないか?」
【ファージャック】
「相手に有利な展開をあえて与え出方を見たり相手の動きに対応する。不利になることはむしろ緊張感が生まれ、意識が芽生えるはずじゃ」
【シン】
「…けどその一度の不利で一撃で仕留められたら終わりじゃないか?」
【ファージャック】
「ふむ、お主がそのように考えることも大事じゃが、有利不利で全てが決まるとは思わぬことじゃな。優勢か劣勢かなぞあてにしてはならんことじゃ」
【シン】
「いまいち言っていることがよくわからないぜ」
【ファージャック】
「お主が考えているのは可能性の話じゃろう、その思考が不安を仰ぎ戦いの場で支障が出ることもある」
【シン】
「戦いって難しいんだな。ケルディがなんで強いのかまだ分からないけど、なんとなく分かる気がする」
【ファージャック】
「戦術や戦略なくして相手を読む、ましてや攻撃を当てるなど無謀なことじゃ、その学びを心得ることができればお主は強くなれるじゃろう」
【シン】
「だから武器に頼るばかりでは相手の意図に気付けないってことなんだな」
【ファージャック】
「武器を使えば立派な戦術も戦略も浮かぶものじゃが、慣れないうちは平たく考えることじゃ。これも戦術じゃろうて」
【シン】
「ファージャックは面白いな、父上はこんな凄い奴と知り合いだなんて」
【ファージャック】
「お主はワシや王神様をなんだと思っておるのじゃ」
【シン】
「さあな、とにかく凄いのは分かった。けど難しいことは後回しだ!」
【ファージャック】
「まったく、都合のいいヤツめ」
そうして二人は修行を続けた。
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