『仙神』ファージャック

2/2
前へ
/2ページ
次へ
仙神(せんしん) 【ファージャック=トレオンス】 「では(あらた)めて、ワシも素手(すで)でゆくとしよう」 持っていた杖をとっさにどこかへ閉まった 【シン=アルベラン】 「行くぞ!」 ヒュイッ、ヒュイッ シンの攻撃はファージャックにまるで当たらない 【ファージャック】 「ただ闇雲(やみくも)(なぐ)るだけがお主の(こぶし)か?」 【シン】 「何言ってるんだ?そんなの当たり前だろ」 【ファージャック】 「こんな戦い方ではいつまでもワシに届くことはないぞ」 【シン】 「ならどんな戦い方なら当たるんだよ!」 【ファージャック】 「お主の場合、先に行動に出て動く(くせ)があるが、これでは相手に先が読まれてしまう。 お主が考えるべきはワシが動くタイミング、もしくは誘導(ゆうどう)して動かすかじゃ」 【シン】 「でも相手に先に動かれたら不利じゃないか?」 【ファージャック】 「相手に有利(ゆうり)展開(てんかい)をあえて(あた)出方(でかた)を見たり相手の動きに対応する。不利になることはむしろ緊張感が生まれ、意識が芽生(めば)えるはずじゃ」 【シン】 「…けどその一度の不利で一撃で仕留(しと)められたら終わりじゃないか?」 【ファージャック】 「ふむ、お主がそのように考えることも大事じゃが、有利不利で全てが決まるとは思わぬことじゃな。優勢(ゆうせい)劣勢(れっせい)かなぞあてにしてはならんことじゃ」 【シン】 「いまいち言っていることがよくわからないぜ」 【ファージャック】 「お主が考えているのは可能性の話じゃろう、その思考が不安を(あお)ぎ戦いの場で支障(ししょう)が出ることもある」 【シン】 「戦いって難しいんだな。ケルディがなんで強いのかまだ分からないけど、なんとなく分かる気がする」 【ファージャック】 「戦術や戦略なくして相手を読む、ましてや攻撃を当てるなど無謀(むぼう)なことじゃ、その学びを心得(こころえ)ることができればお主は強くなれるじゃろう」 【シン】 「だから武器に(たよ)るばかりでは相手の意図(いと)に気付けないってことなんだな」 【ファージャック】 「武器を使えば立派(りっぱ)な戦術も戦略も()かぶものじゃが、慣れないうちは(ひら)たく考えることじゃ。これも戦術じゃろうて」 【シン】 「ファージャックは面白いな、父上はこんな(すご)(やつ)と知り合いだなんて」 【ファージャック】 「お主はワシや王神(おうしん)様をなんだと思っておるのじゃ」 【シン】 「さあな、とにかく凄いのは分かった。けど難しいことは後回しだ!」 【ファージャック】 「まったく、都合のいいヤツめ」 そうして二人は修行を続けた。
/2ページ

最初のコメントを投稿しよう!

0人が本棚に入れています
本棚に追加