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斉藤と榊原の態度は、春樹にとって追い打ちだった。自分と一緒に石和に怒ってくれると思っていた。なのに、彼らはへらへらと笑っている。
「何笑ってんだよ」
「まぁ冗談みたいなもんだろ?」
あんなひどい通りがかりの暴言が、軽いものとして流されていくのを感じる。ショックのあまり、春樹は席を立って石和に文句を言いにいくこともできなかった。……斉藤と榊原は、親しい友人のはずだった。なのに春樹を欠片もかばわない。
春樹は石和の後ろ頭を睨みつけた。
――何でも持っている。
俺は、何でも持っているんだ。
・
石和昌平、出席番号二番。
たぶん背が180センチくらいある。特徴はそのくらい。
クラスでも中の下くらいの地味なグループに一応いるけれど、一人の方が多い。だけど外されてる風でもない。成績はわりと上位。清掃委員会。帰宅部。
騒ぐタイプじゃないけど、協調性がないわけじゃない。全体的に、目立たない。実際、春樹はこれまで彼の存在自体をほとんど気にしたことがなかった。
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