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1.
自慢じゃないけど、何でも持ってる自覚はある。
何回もスカウトされたくらい、顔はいい。童貞は中学の頃、告ってきた先輩で捨てた。まだ高校二年だけど、それ以降恋人が途切れたことはない。
「なー春樹、一年の水本ちゃんに告られたってマジ?」
「なんで知ってんの?」
「うっわ、マジないわ、ムカつく」
昼休み、春樹たちは教室の後ろで、だらだらとたむろしていた。榊原は大げさに頭を抱えて見せる。悪いやつじゃないけど、背が低めで坊主頭なこともあって、なんだか猿っぽい。まぁモテない。
「で、どうしたの?」
雑誌に目をやっていたはずの斉藤が急に聞いてくる。
「ごめんねしたけど」
「っは? マジないわ、ありえねー」
また榊原が大げさに頭を抱え、のたうち回って見せる。
「だって恋人二人もいらないじゃん」
「お前意外と真面目だよなー」
対して興味もなさそうに、斉藤が言った。
「普通だろ」
意外とというのは心外だった。春樹はこれまでぐれたこともないし、酒も煙草もやりはしたけれどハマっていない。クスリに至っては手を出そうとも思わない。
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